The Things I like2007-02-25T02:37:15+09:00threenornsオペラ・映画・好きな事を勝手に綴った日記Excite BlogMET: Eugine Onegin ホロストフスキーは生まれながらのオネーギン!http://threenorns.exblog.jp/4618040/2007-02-09T23:47:00+09:002007-02-25T02:37:15+09:002007-02-16T14:05:21+09:00threenornsOperaドン・カルロ以来、ホロストフスキーをググったり、youtubeしてみたりして、期待レベルのボルテージを相当上げて臨んだこのユージン・オネーギン。オープニングナイトだったんだけど、もう、とてつもなく良かった!大大満足!ホロストフスキー、最高!いやー、これから彼のパフォーマンスはマジで必見。要チェックだわ。
チャイコフスキー作曲のロシアン・オペラだから、まさしくはまり役のホロストフスキー。貴公子ルッキングでアロガントなオネーギンが、若いタチアナをばっさりフるシーン、そして最後にはタチアナへの愛に気づき、初めて人生における能動的な感情を抱く最後のシーン等々、もう最高。立ち振る舞いから歌い方、そしてその表現力、もう全て、彼は本当に生まれながらのオネーギンだわ。
いやー、良かった。満足。満足。ミーハーながら、あの白髪と鋭い視線、そしてあの歌声には相当セクシーさを感じる....。
タチアナ役は、ルネ・フレミング。何となく、今まで何回か観ても、彼女の実力が、私にはピンと来なかったんだけど、いや、今回のタチアナは良かった。やっぱりフレミングは、現在、屈指のディーバと言われる由縁はあるかも。ベッドルームシーンで、一目惚れしたオネーギンに手紙をしたためるシーンは、若い女の子の溢れる感情がよく表されてて非常に良し。彼女の、テクニックも兼ね備えたエモーショナルなパフォーマンスが、他のソプラノと格段に違う事をようやく実感できた感じ。最後の苦悩しながらもオネーギンを振り切るあたりも、非常に良かった。どうやらロシアものにはあまり定評はなかったらしく、一部心配されていたらしいけど、いやー良かった。
レンスキーは、ラモン・ヴァーガス。彼のロミオとジュリエットでは、その容姿も手伝って、多少??だったんだけど、決闘前のアリアkuda kudaも情感たっぷりに唱いあげてて、このレンスキーは予想以上に良かった。
そして指揮者は、ロシア、キローフが誇るあのヴァレリー・ゲルギエフ。本当に彼の演奏はメリハリが効いてて力強く、やっぱりロシアものは演奏しなれてるんだろうなー、と思わせる演奏でこれも満足。
舞台演出が、これまたとっても良かった。Robert Carsenのプロダクションで、Michael Levineがセットデザイン。ミニマルな舞台で、がらんどうの箱に落ち葉を敷き詰めたり、ソフトなライティングによって様々な色彩とニュアンスを生み出したり。非常に象徴的で美しい。
うーん、全体的に、完成度といい満足度といい、相当高くて、相当好き。もう一回観たいと思ったんだけど、すでに全日完売状態。その上、今METがやってるシアターでの生ライブのチケットもすでに完売。このシアターの大画面で、今度はホロストフスキーをアップで拝むのもいいかなぁなんて、ミーハーに思ってみたんだけど結構残念。。
しかし、このオネーギンで、完璧にホロストフスキーの大ファンになってしまった。
これからホロストフスキーのチェックは本腰を入れねば。まずは、彼が歌うオネーギンのCDをゲットせねばとAmazonをチェック。Semyon Bychkov指揮の1994年パリもの発見。えっ??殆どUsedで、その上、安くても$100近くする!!きゃー、それは旦那様に怒られてしまう。。そう思ってUKのAmazonを調べてみたら、20ポンド弱で購入可能。う〜ん??どういう事なんだろう?送料足してもUKの方が断然安いから最速配達で発注した。あー、待ち遠しい。
しかしここのところ、公私ともに(というか「公」は恒常的で「私」が今、特に)忙しい。1/26に急に結婚して、2/1からは今度は姉の結婚式で日本に3泊5日で日本一時帰国。帰ってきた週末にこの大満足のオネーギン。そう考えると「私」の忙しさは、嬉しい忙しさなんで、大歓迎なんだけど、恒常的な「公」の忙しさと両立するのって、本当に大変。風邪ひかないように、今日もプロポリス飲んで寝てみます。。。]]>MET:The First Emperorhttp://threenorns.exblog.jp/4610506/2007-01-09T23:07:00+09:002007-02-15T16:56:20+09:002007-02-15T16:09:55+09:00threenornsOperaタン・ドゥンのニュー・オペラで、ドミンゴがタイトルロールを、演出をチャン・イーモーが手がけ、衣装はワダエミという超豪華プロダクションの「The First Emperor」
プレミアの翌日の記事を読んで、何となーく、予想はしてたんだけど、うーん.....眠たかった。。。確かに舞台は素晴らしい。ライティングや視覚的色合いや舞台の迫力は、計算された美しさと強さがあって大満足。衣装もきらびやかで美しい。ただほんと、残念だけど、音楽的には盛り上がらせるはずのアリアが少なく、その上間延びしてる感じで、感情移入が難しい。その上、私だけかな、ドミンゴ以外の歌手のパートは、アヴァンギャルドちっくな現代音楽に乗せて朗じる感じなんだけど、ドミンゴのパートになるとオペラっぽいというかプッチーニを感じさせる感じで、何かちぐはぐだったりして。あと第一幕が異常に長く感じて、私は睡魔に襲われたんだけど、インターミッションで外に出る観客でも、あくびをしている人が異常に多かった。うーん、残念。。。
こういう10年がかりのプロダクションって、簡単にお蔵にはできないだろうから、やっぱり手直ししてリバイバルさせるんだろうな。まぁまたMETでやる事になったら、観るかどうか結構考えそう。。]]>MET: I Puritani やっぱり凄い、ネトレプコ!http://threenorns.exblog.jp/4610494/2006-12-30T23:56:00+09:002007-02-15T16:54:02+09:002007-02-15T16:06:33+09:00threenornsOperaお待ちかねネトレブコの「清教徒」。やっぱりネトレプコのステージプレゼンスは凄い。このオペラは、ネトレプコのワンマンショーと言ってもいいぐらい。
このオペラは3幕構成で、1幕終わりから2幕全て、3幕の途中まで、ネトレプコが唱うエルヴィラは、正気を失っている役どころ。このベルカントオペラの傑作の一つ「清教徒」は、エルヴィラのマッドシーンをいかに唱うか、コロラトゥーラをいかに唱えるかが見どころらしいが、ネトレプコのパフォーマンスにはもう圧巻!2幕目では、ゴロンと仰向けになり、髪の毛をオーケストラピットにだらりと垂らし、凄まじいキちがいぶりで、唱い狂う。唱い狂う。
いやー、良かった。観客の殆どが彼女を見に来てるわけで、彼女のパフォーマンスで、皆、興奮気味。ただコロラトゥーラのテクニックは?と言われれば、鳥肌が立つような凄さという訳ではなかったが、テクニックよりも、その表現力、カリスマ性、訓練しても身につけられないような、そんなタレントがあるんだなぁ、と今更ながら思ってしまった。また一つ凄いものを見た感じ。
難を言えば、アルトゥール役のテノールが残念ながらカバーだったんだけど、相当厳しく、METのカバーにしては、ちょっと???っていう感じだった。ハイノートを肩をいからせて一生懸命頑張ってたから、まぁ許すけど。まぁ、他のキャストがどうだこうだ、というよりも、もう今日はネトレプコ一色で、とりあえず皆、満足そう。私も、何かイイものをまた観てしまったという満面の笑みで一人Subwayで帰途についた。今考えると、ちょっと薄気味悪いよねぇ。]]>MET: Don Carlo パーペ最高!http://threenorns.exblog.jp/4150602/2006-12-18T23:10:00+09:002006-12-25T18:31:04+09:002006-12-25T18:31:04+09:00threenornsOperaベルディの大作ドン・カルロを観てきた。いやー、もう素晴らしい!の一言。シンガーは豪華キャストで指揮もラバイン。最高の夜だった。
もう何と言ってもフィリッポ王のルネ・パーペ、最高!4幕冒頭のお待ちかねアリア"Ella giammai m'amò!"では、場内割れんばかりの大喝采。ブラボ〜、ブラボ〜と拍手が止まない止まない。フィリッポの王として、夫としての苦渋が見事に表現されていた。まぁフルラネットのフィリッポも相当良かったけど、パーペのフィリッポかなり良し。うん、私の目に狂いは無かった。パリジファルのグルネマンツで初めて聴いて、次に聴いたトリスタンとイゾルデのマルケ王で虜になった。パーペは私が初めてファンになったシンガーなのだ。当時はオフィシャルホームページもなくて、情報に乏しく、METに彼が来る度に取りあえず欠かさず観てきた。うーん、今日のは本当に良かった。非常に満足。
そして、ディミトリー・ホロストフスキーのロドリゴ。もう4幕後半の死んじゃうシーンのアリア、良かったねぇ。これも満場の拍手鳴りやまず。ルックス、立ち振る舞い、もちろん歌い方も、麗しい貴公子そのもの。今シーズンは、この後、ユージン・オネーギンがあるんだけど、相当楽しみになってきた。もっと彼を聴いてみたい!
エボリ公女は、オルガ・ボロディーナ。彼女のダリラを昨シーズン観たけど、相変わらずのビロードの声色は魅惑的で聴き応え満点。宗教裁判長のサミュエル・レイミーは非常にエナジェティックで、老齢で盲目の裁判長にしては、若すぎるぐらいテンションが高かった。エリザベッタは、アメリカ人ソプラノのパトリシア・ラセッテ。情熱的でエモーショナルなエリザベッタで、LAの時のソプラノに比べて格段によし。低声シンガーのアリアが印象的なこのオペラで、美しいソプラノの存在を見せつけてくれた。
わたし的に残念なのは、ドン・カルロのヨハン・ボータ。歌唱は迫力満点で声も大きいんだけど、難点は表現力とあの容姿。ちょっと太り過ぎでかどう見ても動きが辛そう。。折角のエリザベッタとの愛がなかなか伝わってこない。NY Timesの批評が結構面白くって、スラっと長身のフィリッポ王のと丸太のドン・カルロを比べたら、自分だったら、どう考えてもフィリッポ王の后で満足する、と書いてあった。そうだよね。パーペのどこがご不満?って感じ。その上批評では、タイトルを「フィリッポ王の悲劇」に変えるべき、とまで言っていた。まぁ観てみて同感。なにしろパーペが本当に良すぎた。
そして今回は、私にとって先シーズン前半以来のラバインの指揮。おかえりなさいという気分の人が多いのか、彼がピットに入ってくるだけで大拍手が起こっていた。そしてその大きな期待を全く裏切らない素晴らしい演奏だった。何しろ今夜のドン・カルロは5幕パージョン。相当長いが、その長さを感じさせない緊張感溢れる演奏だった。ほんと満足。ま、私の場合は前回がドミンゴだったから、特に今回は指揮者の違い痛感した。
このプロダクションは、ジョン・デクスターで、初演は相当古いらしい。今回も隣の席がオペラ通の品の良い老婦人で、このセットは近くで見たら、つぎはぎだらけなのよ、と言っていた。というかこの人、今回のドン・カルロはドレスリハーサルを含めたら4回目との事。羨ましい限りだが、今回のが一番出来がいいと言っていた。LAのフルラネットも良かったと言ってみたら、フルラネットは最近のフィリッポ王のゴールデン・スタンダードなのよ、と教えたれた。そうか、そうだったのね。
最近殆どオペラは一人で観に来てるけど、わたし的には、ドレスサークル前3列が、費用対効果的に一番気に入ってる。まずは何よりも音が良いし、ステージもちゃんと見える。上で聞いた後だと、オーケストラではもう聞けなくなる。音が上に抜けてくのが感じるもん。そして、大抵隣りは一人で来てる品のある老婦人でパトロン組。まぁパトロンルームはドレスサークルにあって近いからね。。こういう方々は、オペラに相当詳しくって、その上相当観てる。それも1シーズンの1演目を何回も観ちゃうわけだから、本当、財力と時間があるって羨ましい。。。
あー、早く次のオペラ観たいなー。次はネトレプコの清教徒で、その次はタン・ドゥンのFirst Emperor。あー、楽しみぃ。]]>MET: La Boheme ヴィラゾン&ネトレプコ最高! そしてドミンゴに..http://threenorns.exblog.jp/4015889/2006-12-05T23:44:00+09:002006-12-10T19:00:45+09:002006-12-10T18:52:11+09:00threenornsOperaもう、この時を待ってました。一夜限りのヴィラゾンとネトレプコ共演のラ・ボエーム。本当に待ち遠しかった。。。ネトレプコがミミを唱うのがこの夜限りという事で、もうリンカーンセンター前ではダフ屋まがいの行為が横行。立ち見席まで売り切れの超満員だった。
実は、今シーズンの「ラ・ボエーム」、ニュープロダクションの「セビリアの理髪師」と比較されて、ヴィラゾン自体も評判がそこまで良くなかったんで、観に行く前は、ちょっと心配してたのよね。ま、そこは、ドリーム・キャストのパワーでしょう。いやー、二人がインターラクトするとここまで違うのね。やっぱり素晴らしい!二人には、またしても感動させられた。
ヴィラゾンの一幕目、例の甘い情熱たっぷりのアリア「冷たい手」から、もうわたくし的には、やっぱこれでしょう、という感じ。CDではパバロッティものを聴いてたんだけど、ヴィラゾンのは、もっとカラフルでもっとセダクティブ。まぁ満員の観客の殆どは、one night onlyのネトレプコに注目しまくってるから、次のアリア「私はミミ〜」を待ってたとは思うんだけど。そして二人の二重唱はこれまた最高。このチケットを確保するためだけに、半年前からシーズンチケットを買っておいて本当に良かった。いやー、本当に満足、満足。
三幕目最後が、これまた非常に感動的だった。これは別れ話をするシーンで、まだ好きなんだけど、互いに気遣い合って別れようというもの。だけど、冬は一人じゃ寂しいから、春になったら別れようと一時の猶予に身を委ねるあたりは、もう別れる辛さがヒシヒシ伝わってくる。隣でムゼッタとマルチェロが騒々しく喧嘩してるけど、もう全然目がそっちに行かない。完全に二人の悲しい恋にハマってしまった。(ツーショットの写真はネトレプコじゃありません...1回きりなので写真は存在しないかも...)
ま、でも総じて、やっぱり彼等の共演モノは見逃せない。本当に興奮レベルが違うもん。今シーズンは、あとは4月3日の40周年ガラがあるだけで、来シーズンはロメオとジュリエット、08-09シーズンが、ラ・ボエームで多分同じプロダクション。METは毎シーズン、彼等の共演モノを確保しようと必至みたいだけど、噂ではあのザルツブルグのラ・トラビアータが決まったらしい!2010-2011シーズンっていうから、まだまだ相当先の話なんだけど、前代未聞の盛り上がりだった公演の再演だから、なんか世界中からファンが押し寄せてきそう。でも2010年って、一体何年先?自分は一体どこで何をしてるんでしょう?まぁニューヨークにいる限り、オペラ通いはしてるんでしょうけど。]]>New York Philharmonic with Leon Fleischerhttp://threenorns.exblog.jp/4001414/2006-12-02T23:21:00+09:002006-12-08T18:46:47+09:002006-12-08T18:46:47+09:00threenornsOtherNY PhilharmonicのMusic Directorのロリン・マゼールが、後継者として、ダニエル・バレンボエムの名前を挙げた。これは凄い!私としては、是非バレンボエムに来て欲しい。もちろん、現職者が後継者を指名できるシステムではないから、実現するかは微妙らしんだけど。バレンボエムは来年3月にウィーン・フィルを引き連れてカーネギーホールでワグナーを演奏する予定なんだけど、このチケットは先月の時点で、もうバルコニーしか空いてない!やっぱりすごい人気なのね。バレンボエムと言えば、ユダヤ人なのに、パレスティナ問題を巡るイスラエル政府の方針に声高に異を唱えるポリティカルな側面を持つ人だ。著名な芸術家になると、脂っこい国際関係や根強い人種問題には口を挟まない風潮が多い中で、強い主張を示すダレンボエムは、それだけでも他と一線を画すような気がする。その上、あの「オリエンタリズム」の著者サイードとも親交が深いらしく、共同でWest-Eastern Divan orchestraというオーケストラを創設している。これは、ユダヤ人とパレスティナ人の文化交流を目的として設立されたもので、音楽で無益な戦争に終止符を打つべく世界中で公演している。是非、こういう音楽家はNYに来て欲しいものだ。
そして今回、このNYフィル、マゼール指揮の公演を見に行ってきた。当初は全く予定していなかったんだけど、仕事の関係上、この日ゲスト出演したピアニストのリオン・フライシャーを会いに行くという事で。まぁ仕事としては、エージェントのすっぽかしでフライシャーには会えなかったんだけど、予想外に(失礼。。)相当満足できた。フライシャーは、元々神童ピアニストとして若い頃から注目を浴びたが、キャリアの絶頂期30代で当時は原因不明だったディストニアという病気で右手が動かなくなり引退を余儀なくされた不運のピアニスト。以降は左手だけで演奏してたりしたんだけど、90年代になって画期的な治療方法が見つかって04年には見事35年ぶりに両手でカムバック。もう、これだけの情報で臨んだ公演だったら、演奏自体ももちろん素晴らしかったけど、やたら感動した。
最初は、モーツァルトのピアノコンチェルト第12番を両手で演奏したが、どうしても右手に目が行ってしまう。が、軽やかにそしてメリハリのある演奏は、どう考えても30年以上、右手を使っていなかった人とは思えない見事なパフォーマンスだった。次の演目は、左手用に作曲されたPiano Music with Orchestra。片手の演奏は初めて見たけど、この曲、使える左手を思う存分生かせるように作曲されてるようで、とにかく左手が鍵盤の上を、左右お構いなしに飛び回る。パワフルなオーケストラとの競演で、あまりの忙しさに、時折右手が使いたくならないかな、と思う瞬間もあったけど、グイグイと引き込まれる感じでスケールの大きいピアノ協奏曲だった(協奏曲とは言われてないけど)。これは、ヒンデミスの作曲なんだけど、この曲自体、音楽的にも斬新で面白い。でもこれにも逸話があって、実は長い間、幻とされていた楽曲との事。Playbillによると、第一次世界大戦で右手を失ったピアニスト、ポール・ウィトゲンシュタイン(あの哲学者ウィトゲンシュタインの兄)が、1923年にヒンデミスに依頼して作曲させたもので、結局一度も演奏されずにお蔵入り。その後、楽譜自体も紛失してしまい、その上、ヒンデミスの手元にも写しが残されておらず、ようやく見つかったのが2002年。ペンシルバニアの農家から他のウィトゲンスタインの遺品とともに発見されたらしい。これをまたあのフライシャーが弾くというのだから、さらに何か感慨深いものがある。
後半は、マゼールの独壇場で、最後にサロメの最後のシーンの演奏もあったりして、終わりも良し。帰路に就く前に、すっぽかしのエージェントにはメッセージを残したんだけど、逆にThank youと言ってしまった。]]>MET: Il Barbiere di Sivigliahttp://threenorns.exblog.jp/3903338/2006-11-24T23:41:00+09:002006-11-27T14:22:02+09:002006-11-26T21:01:07+09:00threenornsOpera今シーズンのMETのニュープロダクション第二弾、「セビーリャの理髪師」を見てきた。素直に笑える演出に加えて美しい旋律、そして何と言っても、シンガー達が素晴らしい!アルマヴィーヴァ伯爵はフアン・ディエゴ・フローレス、ロジーナはディアナ・ダムラウ、フィガロはペーター・マッティ。いやー、今日はロッシーニ・オペラを堪能できた。
まずはワタシ的には、フィガロ役のマッティ。スウェーデン人バリトンなんだけど、威勢が良くてツヤがある歌声でグイグイ引っ張ってく感じ。コミカルな動きも抜群。全然ノー・マークだったんだけど、ちょっと調べてみたら「フィガロの結婚」や「ドン・ジョバンニ」を得意とするスウェーデンを代表するバリトンらしい。やっぱり北欧の人だからか体格が良くて、そう考えるとチョコチョコと動きまわるフィガロ役って感じではないのかもしれないけど、こういう頼りがいがあるフィガロもアリでしょう。うーん、彼の「フィガロの結婚」も是非見てみたい!
そして、今日のお目当てディアナ・ダムラウ。昨シーズンのMETで、初っ端に観た「ナクサス島のアリアドネ」で、ダムラウはツェルビネッタ役でMETデビューを飾ってたんだけど、実はもう大喝采モノだったのだ。彼女の見事なコロラトゥーラのテクニックといい、その表現力といい、エラく感動した覚えがある。METでも彼女を表現するときに、「昨シーズンに衝撃的デビューを飾った」と形容するぐらいだから、私だけじゃなかったのねー、などとも思ってたんだけど、いやー、今日の公演も彼女の凄さを再認識したわ。本当に音のコントロールがすごい。コロコロと技巧的に、しかもカラフルに。今シーズンは、後半にニュープロダクションの「Die Ägyptische Helena(エジプトのヘレナ)」でも歌う予定。プレミア公演のチケットも勢いで購入済みなので、ますます楽しみになってきた。
そして、もちろんロッシーニ歌いナンバーワンの座を殆ど不動のものにしたフローレス。異常に高低の激しいメロディに異常に早口なリリックを軽々とよどみなく、そして軽やかに歌い上げる。そうじゃなかったら、コミックにならないもんね。さすがはロッシーニ歌いだわ。最初に彼を観たのは、昨シーズンのネトレブコとの共演者の「ドン・パスクワーレ」だったんだけど、その時は、何と彼は急性アレルギーで、第二幕でステージを退場しちゃってたから、何となーく印象悪かったんだけど、今日の公演で断然見直した。まぁワタクシのお好みの声じゃないけど、また是非聞いてみたいと思わせるだけの魅力は十分。まぁ来シーズンも来てくれることでしょう。
残るバルトロ役もドン・バジリオ役も良かった。ドン・バジリオはサミュエル・レイミーだったんだけど、前に聞いた時は、良いというより、凄いという印象だったんだけど、もしかしてお年なのかしら。。
そして演出。ミュージカルでトニー賞にノミネートされた事もある舞台演出家のBartlett Sher。幕が開く前にステージを観てびっくり。ステージが、左右から最前列の真ん前までオーケストラピットを囲むように張り出してる!こんなのアリ?って感じ。えー、オケの音とか大丈夫かなぁ、と心配してみたり。。まぁ斬新と言えば斬新だけど、やっぱりホールの作りがそうなってないからだと思うんだけど、張り出しの真ん前で歌われると、なんか声が分散する感じで、少々オフっぽく聞こえたような気がした。でも演出はさすがに、観客を飽きさせないように細かい演技が仕込んであって純粋に笑える箇所がいくつかあった。ただしセットに関してはイマイチかな、という印象。ドアが沢山でてきて、それらがスライドして場面が作られて行くんだけど少々confusing。あと全体的に照明が暗い。オレンジがモチーフにされててストーリー自体もカラっと明るいのに、なんでステージがいつもこんなに暗いんだろう。まぁでもこんな難点は、すべてシンガー達に素晴らしい歌唱で全然OK。トータル的には十分満足できた舞台だった。
「セビーリャの理髪師」はオペラの定番レパートリーの中では、ロッシーニの数少ない代表作だけど、最近は、その他の作品も再評価されて上演され始めているらしい。ロッシーニは、19世紀初めのオペラ・ブッファ全盛期の超売れっ子作曲家で、「セビーリャの理髪師」は、弱冠24歳の時にたったの13日で書き上げられたという。そして何と37歳の年には突然オペラ作家から美食家に転向。トリュフを探す豚の養豚に精を出し、料理の世界でも後世にその名を残したらしい。こういう破天荒な人って人間として面白そう。一つの物事に極限までハマリきって、スパっと辞める。そしてその次に興味を持ったものにまた没頭する。多少ADHDっぽい気がしないではないが、興味深い人物なので今度ロッシーニ自体を読んでみようかな、と思った。]]>MET: Toscahttp://threenorns.exblog.jp/3752428/2006-11-07T23:57:00+09:002006-11-10T18:19:38+09:002006-11-10T18:12:19+09:00threenornsOpera今シーズン2作目のMETオペラのトスカ、見てきました。これは何と言っても、麗しのホセ・クーラを見聞きしたいがために行ったようなもの。感想はうーーん、残念...。
まずはマリオ役のホセだけど、わたし的には、第3幕、トスカへの愛と絶望を歌い上げる有名なアリア「E lucevan le stelle」を相当期待してたんだけど、ちょっと違和感。「あ、終わっちゃった。。」って感じだった。彼のCDに入っているような激情ほとばしる感じではなくて、悲壮感に打ちひしがれたしんみり風。アリアとしては少々インパクトが足りなくて消化不良。まぁイタリア語で一字一句まで分からないから、情感こもったリリカルな歌い方なのかもしれないけど、まだまだ未熟な私の耳には、ふつーに、あの彼のCDに入ってるようなアリアが聞きたかったかも。またまた勝手に期待しすぎました。。でもホセの歌声はやっぱり好き。男性的な強さとカラフルな歌声は所々に健在で、1幕目のトスカへの愛を語るアリア「Recondita armonia」は初っ端から飛ばしてくれてて、歌い終わるか否かの少々フライング気味のタイミングで、男性客の野太い「Bravo!」の声。うん、でもあれは良かったわ。
問題はタイトルロールのアンドレア・グルーバー。うーん、トスカはデビュー戦だったらしいが、どうもわたし的に彼女の声はお好みじゃない。彼女のトゥーランドットも見たけどその時も確かそう思った。第2幕のスカルピオとの壮絶なはずの殺人シーンも、ドラマとしては張りつめてるけど、どうもトスカの歌声に安定感がなくって少々オシイ気がした。
しかし、どのレビューを読んでみても、やっぱりこの役は、皆、マリア・カラスの亡霊に延々と追われ続けてて、この役をMETで演じるソプラノは、取りあえず、カラスのそれと比較される。確かにトスカという役柄は、嫉妬深いが愛らしさを感じさせる第1幕から、第2幕で精神的に追いつめられて、ついに殺人に至る狂気へと、気高いけれど脆い面もある複雑な役だけに難解と言われているらしい。ロンドンのロイヤル・オペラで、この前ゲオルギューがニュープロダクションで挑戦してたけど、それでもカラスと比較されて「控えめ」とか評価されてたみたいだから、ソプラノとしては満を期して、臨まなきゃならない役なのね。いつかカラスを超えるトスカは出てくるのかしら?
あと今回のちょっとした話題は、1956年にカラスのために特別に作られたというSwarovskiのステージジュエリーが50年ぶりに登場。(写真は初日代役のマリア・グレギーナ)ティアラにネックレス、イヤリングのクリスタルジュエリー、いやー、あれは遠くから見ても美しいわ。今日の両隣のおじいちゃん達も、第2幕で彼女が出てきた途端にオペラグラスで見入る感じ。みんな取りあえず、Swarovskiのティアラをチェックという事か。これらカラスが身につけたSwarovskiのステージジュエリー達は、世界中をツアーしていて、来年METでも一定期間特別展示されるらしい。
スカルピオ役は、ジェイムス・モリス。もっといやらしくてギトギトしててもいいのに、ちょっと紳士的だった。拷問に耐えるマリオの苦痛の叫び声を聞きながら、トスカを精神的にいたぶって、それでモノにしようという役柄なんだから、もっと倒錯系入ってて欲しかった。モリスと言えば、私の中では、リングのヴォータンなんだけど、好き勝手やってる割には奥さんになじられたりして、神様のくせに人間っぽく、最後にはブリュンヒルデへの父娘の愛を感じさせる暖かい役柄で、非常に好感が持ってたんだけど。このスカルピオみたいな役だと合わないのかなー。もっとギラギラした権力と欲望を感じさせて欲しかった。
指揮者は、METデビューのNicola Luisotti。いつも聞いてるのは、カラスのde Sabata指揮1953年ものなんだけど、出だしからテンポが違ったりして、最初は、ん?って思ったけれど、ドラマの緊迫感を見事に紡ぎ出して、メリハリを効かせた演奏だった。
舞台はゼフェレリで、初演は1985年の息の長いプロダクション。METも09年にはニュープロダクションをやるらしいので、今のうちにゼフェレリものは見ておかないと。ただ今日はドレスサークルから見てたんだけど、ちょっと上過ぎて、第3幕の真ん中の象徴的な像の上が欠けちゃって、ちょっと残念。やっぱりドレスサークルの限界かしら。まぁ次からはお財布と相談だなー。
おっと、そうだ。あれだけムカついたベルモントルームの老スタッフ。残念ながら今日は別の老スタッフだった。でも前回のトラウマか、あのサイドテーブルには近寄る気がしなかった。後遺症は続く。。]]>Sankai Juku: KAGEMIhttp://threenorns.exblog.jp/3752258/2006-10-28T23:42:00+09:002006-11-10T17:47:20+09:002006-11-10T17:46:27+09:00threenornsOther初めてみた山海塾。主宰の天児牛大が率いる舞踏カンパニーだ。舞台は至ってシンプルで、白塗りのダンサー達が、静と動を織り交ぜたパフォーマンスを繰り広げる。窒息寸前の「静」の中から、絶妙のタイミングではじける「動」は、一種心地よい。幻想的な世界に嫌が応にも引き込まれた時間だった。私は好き。一緒に見に行った友人が、山海塾のダンサーさんと軽く知り合いらしく、舞台の後で楽屋に侵入。白塗りのダンサーさんとお話ししたけど、至って普通の人でちょっとびっくり。でもまだ白塗りを落としてなかったから、街で会っても絶対識別不能。NYにはテロもあって、足が遠のいてしまった、と言ってたけど、またチャンスがあったら絶対見たい。]]>The Old Guard Strikes Back:老兵の逆襲http://threenorns.exblog.jp/3638378/2006-10-23T23:52:00+09:002006-10-26T15:05:23+09:002006-10-26T15:05:23+09:00threenornsOperaこのタイトル、ちなみにオペラでも映画でもありません。これはこの前、マダム・バタフライを観に行った時の事。
それは、初っ端から舞台の美しさに圧倒された後に、ほっと息をつくはずの最初のインターミッションの時での出来事だった。私はいつも通り、メンバーズオンリーのベルモントルームに足早に向かった。映画でもお芝居でも、沢山の人が入った会場だと、どうしても途中でトイレに行きたくなるんじゃないか恐怖症に陥る私は、インターミッションの時間配分には結構神経質だ。トイレには絶対行きたいし、コーヒーも飲みたい。ついでにタバコも吸いたいし。これをスムースにこなすには、ベルモントルームへのアクセスは必須なのだ。
ベルモントルームに着くと、多少の列に並んでコーヒーを買う。だんだん列が長くなってくるので、買ったらすぐにバーを離れ、半分開いたままのクラッチバックを小脇に抱え、熱いコーヒーを片手にスペースを探した。どうせ席は空いてないので、大抵私は、バルコニーに直行して、コーヒーとタバコ、そして外の空気で一息付くのだ。とりあえず、クラッチバックを閉じなきゃ、と思い、ベルモントルームを出る前に、入り口付近にあるクラッシーなサイドテーブルに向かう。テーブルにはアジア人男性がサンドイッチをほおばり、その横にはいつもいる、多分METのスタッフであろう老婦人がパトロンをもてなす為に立っていた。テーブルに近づいた私は、とりあえずコーヒーを置こうとした。
と、その瞬間、いきなりその老スタッフの鋭い声。
「THIS IS NOT YOUR DINING TABLE!!」
(ここはあなたのダイニングテーブルじゃないのよ!)
え??私の事?と、思った瞬間、あまりの驚きで、思わず「sorry」と口にしてしまい、そそくさとベルモントルームを出てしまった。出た瞬間、え?なんで怒られちゃうわけ?何かマナー違反した?というか、何で「sorry」って言っちゃったんだろう! 突然、訳もなく失礼な事を言われ、その上、それを即座になんで謝ってしまうだなんて!!
老スタッフへの怒りもさる事ながら自分への憤りも感じながら、いきなりの事態に混乱しながらバルコニーに向かうと、今夜は雨のため外には出れず。さらにむしゃくしゃするので、1階まで降りて外に出て、とりあえずタバコを吸って気持ちを落ち着かせた。でも、なんで???全然理由がわからない!
服装はそこまで超フォーマルじゃないけどワンピースだし、それとも、アジア人だから?若いから?それともあのサンドイッチを食べてたアジア人男性とカップルの観光客だと思われて、わからん言語で大声で話し出すとでも思ったのか?もう、どう考えても、あんな言い方される理由が見つからない。せっかくのオペラの感動が、こんな事で汚されてしまうとは!考えれば考える癪に障ってむかついてくるので、深呼吸しながら、残りのオペラのために、とりあえず怒りは封印した。
まぁその後は、ミンゲラの素晴らしい舞台演出と、天性の切り替えの良さで嫌な事は全て忘れてオペラを堪能。最後にはウルっと感動しながら家路につく。そして、ふと、あの傍若無人なMET老スタッフを思い出した。
あっ、そうだ。METの新たなポリシーのせいだ。絶対そうに違いない!
METでは、新たな総支配人ピーター・ゲルブが若い観客を動員するために、ありとあらゆる手を使って、「親しみやすいMET」「誰でも観に来れるMET」のスローガンの下、一般受けするパブリをガンガン打っている。そのせいで、オペラなんて聞いたこともない若いジェネレーションがきっとMETに押し寄せてるはず。あの老スタッフは、そんな流れに頑として反対する古いソサイエティの老兵だ。きっと私の事は、巧みなパブリで、ふらふらと迷い込んだ若いジェネレーションだと思ったのだろう。うん、それだったら納得がいく。絶対そうだ。これはMETに絶対言ってやらないと。
家に着くなり、即METのホームページにクレームを書き込む。「ベルモントルームで老スタッフに侮辱された。若いからか?それともアジア人だから?若いジェネレーションを呼び込みたいんだったら、あの手の老兵はパトロンルームに閉じこめろ。ベルモントルームレベルの場所には、Old METの生き残りはのさばらせるな。もちろん、伝統を守る事は大切だけど、悪弊は取り除くべし」など云々。もちろんこんな言語は使わずに、最後にBecause I love METと書き加えて、そして送信。結構な長文を時間を掛けて書き込んでしまった。これで少しだけ気分がすっきりする。この前METにコメント書いたのは、ラトアビアータの第2幕、テノールのアリアがなぜ省略されたのか、という質問だったが、1か月後に丁寧な説明メイルが返ってきた。今回もしばらくしたら何らかの謝罪メールが届くのだろう。
と、思っていたら翌日夕方、場所はオフィス。なんとMETのカスタマーサービスがわざわざ謝罪の電話を掛けてきたのだ。事情をもう一度説明したところ、カスタマーサービス担当も、それは間違ってる、誠に申し訳ございません。このクレームはカスタマーサービスのマネージャーに報告します、と平謝り。次回はフリーシャンパンぐらいのサービスがあるのかと一瞬期待したけど(せこい!)、まぁそんな事はなく、一通りの会話が終わった。取りあえず、自分の声が伝わった事に満足したが、あまりの対応の早さに、METの必至な若返り作戦がヒシヒシと伝わってきた。
本来は自分を若いと形容するのは憚られる年齢なんだけど、METの観客の平均年齢は毎年1歳ずつ上がって来てて、今では65歳に達してるという。これに比べたら、私なんてまだまだひよっこ。アメリカ人の平均寿命は分からないが、このペースだとMETはあと10年以上持たないじゃん!そう、若返りは死活問題なのだ。
そして、本日月曜日、今度はMETのマーケティングスタッフから、また謝罪のメールが入ってきた。この問題は、カスタマーサービスから、さらに上のHouse Management Departmentに報告され、そのマネージメント側から、例の老スタッフには直接、今回の事態を追求するとの事。すごいぞMET、この対応は。この手の大組織は人種問題の火種に敏感な上に、現在、存亡をかけた若返り大作戦の真っ最中だから、相当気合いが入っている。返信として、謝罪は分かったが、あのスタッフがなぜあのような傍若無人な振る舞いに及んだ理由を知りたい、と返えておいた。果たして、返事は来るのだろうか。。。]]>MET: Madama Butterfly MET2006~2007シーズンの始まり!http://threenorns.exblog.jp/3609513/2006-10-17T23:44:00+09:002006-10-28T16:19:39+09:002006-10-22T16:53:40+09:00threenornsOperaMETの06~07シーズン第1本目、派手なパブリで注目度抜群のマダム・バタフライを見てきた。感動!うつくしい!初っ端からこれはMUST SEEモノ。最後は感動でウルっときてしまった。
ディレクターは映画監督でもあるアンソニー・ミンゲラ。指揮はアッシャー・フィッシュ、蝶々夫人はチリ人ソプラノのクリスティナ・ガラルド=ドマスで、ピンカートンはマルチェロ・ジョルダーニ。シャープレスは、ドゥウェイン・クロフト。
まずは何と言っても舞台演出でしょう。とにかく照明が素晴らしく、舞台に浮き上がるシルエットや提灯の明かり、また場面で変わるバックドロップの色遣いも効果的で、視覚的に非常に満足度高し。
舞台に関する前評判が高かったのと、METのオープニングのパブリが凄かったから、見に行く前から象徴的なシーンの映像は目にしてたんだけど、いやー、実際に生で見てみると、その美的刺激度が全然違う。思わず、ため息が出ちゃうような圧倒的な場面が数々あった。
特に印象的だったのは、どぎつい赤のバックドロップからシルエットで登場する蝶々さんのシーンもそうだけど、ピンカートンとの二重唱シーンや2幕目序曲の蝶々さんの幻想シーン。これは、いないはずのピンカートンが椅子に座っているところに、蝶々さんが近寄って行って愛おしいそうに花を渡そうとする。すると二人は一瞬、白い障子に覆われて、障子が横にはけていくと、そこには空の椅子と幻覚をみていた蝶々さんが取り残されてる...。うーん、うまい!あと、カリオグラフされた黒子たちが舞台では大活躍で、マイナー舞台転換では、障子を踊るようになめらかに動かして、その障子の動きだけでも視覚的に美しい。そして子役は文楽の人形。これにはレビューなんかではなぜ??という異論も目にしたけど、わたし的には全然OK。微妙に首を傾げる仕草までよく表現されていた。
そして最後の自害シーンはさらに印象的。蝶々さんが首に小刀を差した瞬間に黒子が蝶々さんに近寄ってきて、流血を表す真っ赤な帯を舞台前後に広げていく。傍らでは目を覆う文楽の人形。そしてプッチーニっぽい壮大で悲劇的なクライマックス。もう感動モノですよ。これは。
難を言えば、アメリカ人にはわからんだろう変な日本風着物姿。特にゴロー役やヤマドリ役の衣装は、どう考えても江戸時代のお城に参内するみたいなお殿様の衣装で、その上頭の上には、30センチ以上もあろうチョンマゲが上に向いて直立している。そう、バカ殿っぽいのだ。まぁ最後の方は、一気に悲劇的な死に向かってドライブしていくので、あまり気にならなくはなったけど。
いや、それにしても、ミンゲラ、良くやった。これをオープニングナイトに引っ提げて、派手にパブリを打ったゲルブも相当凄いけど。何しろオープニングナイトでは、リンカンセンターではレッドカーペットでセレブを歩かせ、入り口前とタイムズスクエアでは巨大スクリーンで生中継。その上あの喧噪のタイムズスクエアでは席まで用意されていた。ほんとやる事が違うは、ゲルブは。このオペラは演出的に今まで全然オペラに興味がない人でも、十分に楽しめると思う。METにもっと若いジェネレーションを引きつけたいなら、是非、こういうModern productionで御願いしたい。同じModernでもヨーロッパみたいなシュール過ぎな演出は当たりはずれが激しそうだし、ブロードウェイみたいに俗っぽくなるのは相当嫌だし。ミンゲラには、こういう美を追求したオペラをまた演出してほしいものだ。
相当気に入ったので、もう1回見ようと思ったら、なんとすでに全公演全て売り切れ。もうバカ売れですよ。まぁ、よくよく考えると、オペラを見た事ない友人3人から、オペラに連れてけコールが来てるぐらいだから、まぁそうだよね、見てみたくなるよねー。
んで肝心のMusicの方だけど、蝶々夫人役のギャラルド=ドマスはレビューが良くなかったから心配してたんだけど、全然OK。というか、第2幕、カラ元気のように望みを持ち続けるいたいけな様子から、一気に自殺に至るまできちんと表現できてたと思う。まぁ最高という訳ではないけど、これだけ歌えて、その上身体が小さくて華奢だからビジュアル的にも役柄にマッチしてたと思う。これがデボラ・ヴォイとかだったら、ホント幻滅じゃん。
ピンカートンのマルチェロ・ジョルダーニ、聞かせるねぇ。知り合いが、今の彼はキャリアの絶頂期だと言っていたが、それも頷ける。最後の場面では、苦悩が表現されすぎた?のか、なんか善人ピンカートンという感じがした。あとは、シャープレス役のドウェイン・クロフト。彼も良かったねー。
という事で、話題のマダム・バタフライ、相当楽しんできました。次回は11月初めのトスカ。これはホセ・クーラがカヴァラドッシをやるから、これも乞うご期待。あー、本当、オペラシーズンが始まると忙しい、忙しい。]]>LA OPERA後記http://threenorns.exblog.jp/3566969/2006-10-01T23:25:00+09:002006-10-16T15:32:22+09:002006-10-16T15:31:15+09:00threenornsOpera
実はマノンを観た翌日は、車もなくて移動するのも面倒なんで、シーズンオープニング2作目だったドン・カルロをもう一回観た。うーん、やっぱりフルラネットはいいわ。ただ前回も今回も、このフルラネットの見せ場のアリアが、インターミッション直後にあるから、不届きな客がヒソヒソ話し込んだり、動いたりで、結構煩い。わたし的には、このオペラ最高の見せ場で期待度が一気に上昇してるのに、観客の集中レベルがついてきてなく、結構周りにむかついた。特に今回の隣は、暗くなってから後から席をまたいでやって来たおばさんで、フルラネットのアリアが始まってるのに、いきなり、カバンをガサガサ、ガサガサ。またか!と思い、思いっきりにらんでやったら、「大丈夫、もうすぐ終わるから」と訳のわからん事を抜かした挙げ句、何かを取り出し、今度はボリボリ食べ始める始末。あー、もうわたし的には、最高の見せ場なのに!!その上、このおばさん、オペラの最後のシーンでいきなり立ち上がって、真ん中に近い席なのに皆に迷惑掛けまくりながら出ていった。本当にマナーが悪い。METだと、幕の途中は、緊急事態以外出れないはずだから、そういう意味ではLAは観客ルールがルーズだね。
そうそう、このドン・カルロが始まる前のレクチャーでは、指揮者のジェイムズ・コンロンが登場して質問に答えてた。彼は結構気さくな感じで、ペラペラと色んな事を饒舌に話す。最後の質問で「あと15分で、ピットに立って指揮をするわけですが、心の準備や切り替えはどうするんですか」というのがあった。そうだよねー、これから何時間もの壮大なオペラを指揮するのに、こんなにお気楽でいいのかしら?と思わず同感。手を抜いたりするんじゃないのー、ぐらいに一瞬思ったりした。だけど、さすがはコンロン。自分は、ずっとオペラの世界に生きているから、切り替える必要はない、だって。ただその後に語った、自分のオペラに対する心構えがすごく印象的だった。彼曰く、自分がオペラを初めて聞いたのは11歳の時で、その感動が今の自分のキャリアを作るきっかけになったという。また未来は予測不可能なもので、これが最後の指揮になるかもしれないと、常にそう思いながら毎回の公演に臨んでいるという。だから、これが最後になるかもしれないという自分の思いに加えて、もしかしたらオペラ初体験の人のその後の人生を変える可能性もあると思うと、毎回、毎回、身が引き締まる思いで、常に100%以上を出し切ろうという思いになると言うのだ。この言葉、お気楽な彼の言い訳なのかもしれないけど、とてもとても心に響いた。最後という過去からの帰結点と初めてという未来への出発点。これは、オペラだけに限らず、日常で人と接する時の行為一つ一つに言える事。うーん、コンロンを結構好きになりました。]]>LA OPERA: MANONhttp://threenorns.exblog.jp/3538184/2006-09-30T23:37:00+09:002006-10-16T15:22:10+09:002006-10-12T16:49:23+09:00threenornsOpera待ちに待ったヴィラゾンとナトレプコのニュープロダクションのマノン。またまたLAまで足を伸ばして観に行って来た。
いや、それにしてもこのプロダクションは異常のHot!!!この二人だからこそできる演出ばかりで、というか絡みすぎ?四六時中キスしまくってるし、ベッドの上では危険なぐらい絡み合ってるし、挙げ句の果てには、教会の入り口で押し倒しちゃうし。本当にいいの??という演出の連続。artyさは感じなかったけど、マノンとデ・グリューの二人のドラマに全てを凝縮させたオペラだった。
まずはヴィラゾン。教会での独白アリア"Ah! Fuyez, Douce Image"は、いやー、聴き応えあったね。もう最高!やっぱりこういうのはヴィラゾンはうまい。のたうち回りながらも、マノンの面影を忘れようとする苦悩のデ・グリューを見事に歌い切ってた。今回はこのアリアを聞きに来たようなもんだから、はるばるやって来てほんと良かった。このアリアは彼のCD、"Gounod Massenet Arias"にもに入ってるんだけど、CDでの歌いっぷりより、舞台だとより情熱的で切なく甘く、そしてグっと迫るものがある。やっぱり彼はstage animalなんだね。マノンのCDはマルセロ・アルバラスがデ・グリューのを聞いてたんだけど、彼のこのアリアも甘くて非常によろしく、危うくファンになりかけるところだったんだけど、やっぱりヴィラゾンだね。また惚れ直しました。
次にネトレプコ。今回のオペラのレビューはチラホラ読んだけど、やっぱり、皆、ネトレブコの七変化に注目が集まってるねー。初っ端はオードリー・ヘップバーン風の田舎娘から始まって、デ・グリューと駆け落ち後は、キュートで愛情一杯のマノン。お金に目がくらんでデ・グリューを捨てた後は、エリザベス・テイラー風の社交界の花形に転身して、若さと美しさを謳歌する。それでもやっぱりデ・グリューが忘れられずに教会で捨て身の懇願、再びデ・グリューをゲットした後は、マリリンモンロー風の出で立ちで、快楽を追い求めるマノン。そして最後はギャンブルで捕まって牢獄にぶち込まれてみすぼらしい最後を遂げるマノン。いやー、これがそれぞれ、全部違うwigをかぶって髪型から雰囲気まで全部完璧に変えて、Act毎にこれだけ違う顔を見せるネトレプコはやっぱりすごい。いつも思うんだけど、これだけディマンディングな動きをこなして、尚かつあれだけ歌えるのは、本当に拍手モノ。
特にヴィラゾンとネトレプコのコンビになると、chemistryが本当にいい。ネトレプコとフローレス、ヴィラゾンとフレミングのコンビも観たけど、舞台から伝わってくる二人の感情の距離感が格段に違う。METでは、ヴィラゾンがラ・ボエームに出るんだけど、12月5日の一夜だけはネトレブコがミミ役を。来年4月3日のMETの特別Galaも二人の共演で、大好きなマノンの教会シーンが演じられるはず。両方とも、もちろんチケットは購入済みなんだけど、このマノンでさらに期待度が一気にアップした。ヴィラゾンだけでも十分満足なんだけど、ネトレプコとのコンビになると、ほんと見逃せない。
今回のマノン、指揮者はビッグタイムテノールのドミンゴ。彼の指揮は.....残念ながら緩慢でスロー、本当に切れ味が悪い。何ででしょう。まぁきっと歌う側としては、歌い易そうだったけど。うーん、残念。。
演出は、ビンセント・ピーターソン。本職はカリオグラファーで、今回はオペラ初挑戦。ピーターソンは、マイケル・ジャクソンやマドンナのビデオのカリオグラファーでその道では非常に有名人らしい。初オペラのこのマノンは、舞台を1950年代の戦後に移行して、マドンナじゃないけど、マノンはマテリアル・ガールだというコンセプトで創ったという。確かに。まぁ、あれだけ着せ替えネトレプコで遊べたら、演出するのも面白かっただろうと思ってしまった。マリリン姿のネトレプコにポールダンスやらせちゃうし、ヴィラゾンとネトレプコの絡み合うシーンはほとんどRated Rギリギリだし。ACT毎のコンセプトがダイレクトで、そういうい意味で観てて非常に楽しかったけど、全体的にちょっとライト過ぎたかな、とも思った。まぁロバート・ウィルソンのartyな演出もいいけど、こういうエンターテイメント色バリバリの演出もたまにだったらいいかな。
これで、今シーズンのLA OPERA、観たかったヴィラゾンのトラヴィアータも、ネトレプコとヴィラゾンの共演も両方観れたし満足、満足。難を言えばLA OPERAのシーティングかな。このマノンは結構前にかったのに4列目の端っこで、公演1週間ぐらい前にネットでチケットの空き状況をチェックしたら、2枚からしか受け付けてない。むむ??ってことはやっぱり、1枚買いは端になるという理屈なんだよね。きっと。
まぁ、今回は仕事も休まず、NYから週末だけLAにオペラを見に行けるのを実証したから、今度は週末ヨーロッパにトライしてみようかな、とも思っている。という事で手始めはロンドンから。ちょっとロイヤル・オペラのウェブページをチェックしてみよっと。]]>Don Carlo (LA Opera)http://threenorns.exblog.jp/3333585/2006-09-10T23:03:00+09:002006-09-15T18:08:28+09:002006-09-15T18:08:28+09:00threenorns未分類前夜に続いてLA OPERAのオープニング・ウィークエンド第2弾のドン・カルロ。タイトルロールはサルバトーレ・リチートラ、フィリッポ王はフェルッチオ・フルラネット。演出はイアン・ジャッジ。指揮は前夜に続きジェイムス・コンロン。このオペラ、はっきり言って、前夜のトラビアータよりも格段に良かった。いや、満足。これでNYに気持ちよく帰れる。
前夜のトラビアータだけだったら、それこそ生ローランドを楽しんだのみ、という複雑な思いで帰途についたであろう、この無謀なLA Opera Tripも、フルラネットの見事なフィリッポ王で全て帳消し。とてもよい。舞台での存在感、迫力、重厚な歌唱、もう全て良し。もちろん、苦悩を語る見せ場のアリア"Ella giammai m’amo"ではもう満場の拍手だった。実は、METでも今シーズン「ドン・カルロ」が予定されてて、このフィリッポ王は、お気に入りのルネ・パーペが歌う予定なんだけど、このフルラネットを聞いた後で、逆にパーペが聞き劣りしないか、今から心配になったりして。でもそれぐらいこの日のフルラネットのフィリッポ王は見事だった。大満足。
タイトルロールのリチートラ。彼はMETの「運命の力」ドン・アルヴァーロを聞いた事あるけど、力強いハリのある高音は、聞いてて爽快。ロドリゴとの二重唱は力強くて特に良い。ただちょっとドン・カルロにしては、少々マッチョ過ぎな感じがした。わたし的には、もうちょっとツヤと弱さが欲しい感じ。
あと、迫力満点のエボリ公女はドローラ・ザジック。体格も迫力で、聴き応え十分。エリザベッタ役のソプラノが少々残念だった。
演出はIan Judge。ニュープロダクションで、どろどろした人間関係と不穏な世相を反映した赤と黒がモチーフが効いてて、全体的な緊迫感と苦悩がよく表現された舞台。これも良し。
指揮者はジェイムス・コンロン。全編に渡ってドラマチックに緊張感溢れる演奏。インターミッションが1回しかない長い一幕を、全く間延びさせず聞かせたって感じ。前夜のトラビアータはどうしちゃったんだろう。。
この「ドン・カルロ」、ストーリー的にも非常に面白いオペラで私は好き。圧政統治を行うフィリッポ王、父親に恋人を奪われた王子ドン・カルロ、蹂躙された祖国の復活を強く願うロドリゴ、美貌が故に翻弄されるエボリ公女、ドン・カルロへ想いを裁ち切り義母に徹しようとするエリザベッタ。登場人物がそれぞれ苦悩を持っていて、見事なドラマを紬ぎ出している。このご時世の公演なんで、記事などでは今のアメリカを反映しているとも言われている。逆らう者は処刑するという冷徹なフィリッポ王と、そんな彼も逆らえない強大な権力を持つキリスト教の宗教裁判長の対峙も、このオペラの大切な要素の一つ。ただフィリッポ王の苦悩の吐露が名場面になっちゃうこのオペラだと、心情的にはそこまで悪者に見えないのが、アメリカの現実とはちょっと違うかな、という気はするが。。
当初の予定では、「ドン・カルロ」を満喫した後に空港に直行、レッド・アイで月曜日の早朝NYに戻って、何食わぬ顔で出社するつもりだったが、この後大トラブル。
LAからのフライトが機体トラブルで思いっきりdelay。待たされた挙げ句、ようやく滑走路で加速を始めたと思ったら、ん?スピードがなかなか上がらない。こんなんで離陸できるの?って思ってたら、案の定、機体トラブルの機内アナウンス。ついこの間、ケンタッキーで、間違って短い方の滑走路を使ったせいで十分に加速できなくって、飛行機墜落しちゃったよなー、とヤな記憶が脳裏をよぎる。うん、安全一番です。ちゃんと点検してください、と思っていたのもつかの間、点検じゃぁ分かんないのか、直すのが面倒なのか、機体をチェンジする事に。乗客は一端降ろされてまた空港待機する事1時間。えー、私のフライトはシカゴで乗り換えなんですけどっー。別の機体に乗り込んだはいいけど、絶対乗り継ぎ便を逃した私。オペラの後で余裕を持って、この乗り継ぎ便にしたのに、こんな事だったら、1本前の直行便にすれば良かったと大後悔。ツイてないなーとよくよく考えたら、日にちが変わって、9月11日に飛行機に乗って大陸横断しようとしてる私。その上エアラインはUnited。相当ヤな感じがしたけど、何はともあれ、無事にNYに戻ってこれたから良しとするか。あー、それにしても疲れた。疲れた。]]>La Traviata (LA OPERA) Opening Nighthttp://threenorns.exblog.jp/3318152/2006-09-09T23:09:00+09:002006-09-13T18:31:48+09:002006-09-13T18:31:48+09:00threenornsOpera待ちに待った06-07シーズンの始まり!まずはLA OPERAのオープニングナイトで、ルネ・フレミングとローランド・ヴィラゾンのラ・トラビアータ。
看板もポスターもフレミング一色だけど、わたし的には、まずはやっぱりローランドでしょう。あのパッション、あのエモーション、伸びる甘い声に全身で表現するスタイルを生で見ると、やっぱりはるばるニューヨークからやって来てよかったと実感。シーズンをローランドで始められて本当に良かった。耳に目に焼き付いてるザルツブルグのトラビアータと、どうしても比較してしまうけど、それでもヴィラゾンのアルフレードを生で見れたのはホントに感激。わたし的には、彼の「undi felice, eterea」のアリアが大好き。もうたまりません。やっぱり、若者特有の激しさ、情熱、弱さを歌わせたら、彼は天下一品だね。あー満足。これで9月末のナトレプコとのマノンが本当に楽しみになった。
観客のお目当ては何と言ってもルネ・フレミング。生フレミングは、METでマノンを見たけれど、あの時は歌がうまいなーぐらいの感想だったが、今回はローランドにつられてなのか演出なのか、やたら激しく情熱的なヴィオレッタを演じてた。実は彼女のマノンのCDを聞いてた時に、ふと「この人、演歌のノリがあるかも」と思っていたが、今回の"Sempre libera"で確信!"ゼェ〜ンプレ〜"ってウナっちゃって、殆ど都はるみの「あんこ椿」状態(ちょっと古い?)。初めて聞いたよ、オペラでウナルのって。時々、力拳を握ったり、突然叫ぶように歌ったり、少々オーバー気味というか情緒不安定系のヴィオレッタだった感じがした。
ヴィラゾンとフレミングの絡みは、ザルツブルグばりにキスしまくってて、これには隣のおばさんが「このアルフレードは....」少々驚きながらも、最近の若い歌手にはこういう表現も許されるのね、と変な解説をして勝手に納得してた。
パパ・ジェルモンは往年のRenato Bruson。盛りを過ぎたとどこかに書いてあったが、やっぱりあまり印象的ではなかったかも。当初のキャストはディミトリー・ホロストフスキーだったというのが非常に残念。
プロダクション自体は、クラッシーでターキー系の舞台なんだけど、演出が歌手に頼りすぎで斬新さには欠ける感は否めない。この路線だったら、やっぱりゼフェレリぐらいに派手に豪華にやってくれないと。ディレクターは、LA OperaのGeneral Managerでもあるドミンゴの奥さんマータ・ドミンゴ。うーん...。3回キリの特別公演だから、リハをしっかりやってなかったのか、と思ってしまうぐらい、まとまりの点で完成度が低い気がした。
指揮は、このシーズンからミュージック・ディレクターに就任したジェイムス・コンロン。METでの時はとても良かったんだけど、オケの違いかな、ちょっと残念。
このトラヴィアータは、撮影されてて、DVD発売されるらしい。大丈夫かなーと少々心配になってしまう。まぁあと2回公演があるから、イイとこ取りして編集してほしい。
こんな感想だと、わざわざLAまで見に行った甲斐があったか、って自問自答してしまうけど、答えは十分YES。大満足とは言わないけど、生ロランドのアルフレードを拝めただけでも十分満足。その上、今回は、何しろオープニングナイトだから、まぁド派手なビバリーヒルズ系のイブニングドレス軍団が闊歩してて、これまた迫力。あの図々しさといい、ケバケバさといい、ホントこれは一見の価値あり。還暦は超えてるぐらいのおばあさんが、真っ白のウェディングドレスみたいなドレスでレッドカーペットに出て来たときには、マジで卒倒しそうになった。
いやー、今回はNYから土曜日の早朝に飛んで、午前中につき、ホテルで休憩してから夜の公演を観たんだけど、さすがに疲れた。実は翌日曜日にドン・カルロも観ている。この感想はまた追って後ほど。]]>https://www.excite.co.jp/https://www.exblog.jp/https://ssl2.excite.co.jp/